2011年8月12日金曜日

42歳からの妊娠・出産・・・(帝王切開)入院~手術準備

出産前日の7月27日(水)
朝9時に北海道社会保険病院に入院。

30週あたりから逆子になり、逆子体操やお灸治療などを試みたものの、
ついに最後まで頭位に戻らず・・・。

この日は麻酔科の先生の診察がメイン。
2つの麻酔の説明を受ける。
脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔。
前者は局所麻酔で下半身だけをしびれさせる麻酔。
後者は背中に細いカテーテルを入れ、痛み止めを入れるもの。

この2つの麻酔により、手術中は意識がある中で、赤ちゃんが取り出されるのだ。

担当の麻酔科の先生は落ち着いた感じの女医さん。
丁寧に当日の流れを説明してくれた。
同席していた看護師さんは、ベテラン風のとても優しい人だった。
「私も高齢出産経験者ですよ。一緒に乗り切りましょうね!」と
暖かい笑顔で励ましてくれた。

不安がないわけではないが、一連の丁寧な説明、手続きと、ベテランの有賀先生に
執刀してもらえるという安心感から、私自身は、落ち着いて手術を受け止めていた。

・・・が、そばについていてくれた夫のイチロウは入院時からそわそわ。
手術日の朝は「最後の妊婦姿を撮ろう!」などといい、病室で写真撮影もしたりしたが、
15時半予定の手術までの時間をもてあまし、読書して気を紛らわすものの、
緊張の表情を隠しきれない。

手術当日の私は、朝はパン2つだけの軽い食事のみ。麻酔をするため、
水分も12時半までと制限されている。
そして、初めての浣腸・・・。これでお腹の中一掃が終了。
同時に、水分補給のための点滴が始まった。

お昼すこし前。赤ちゃんの心拍確認のNST(ノンストレステスト)のあと、
最後の診察。赤ちゃんの頭の位置を確認するエコーをやります、とのこと。
担当医の有賀先生。「どうでしょう。赤ちゃんは・・・」と言いながら、私のお腹を触る。
「うーん。ここに頭がありそうだね」
はい。そのようですね・・・とわたし。

私ももう、赤ちゃんの頭の位置については相当にベテランになった。
エコーで確認するも、残念ながら、おへそのあたりに、しっかりと赤ちゃんの頭があった。
「もう今日生まれますからお話しますが、たぶん臍帯が巻き付いてると思います」
有賀先生は最初の診察時から、きっとそのことは分かっていたのだろう。
私が再三にわたり、臍の緒が巻き付いているから逆子が戻らないのでは?と問うてきた。
やっぱり。そうだったのか。

「でも、大丈夫ですよ。よくあることです。赤ちゃんは元気ですので安心してください」
赤ちゃんの心拍と陣痛の度合いを確認をするNST(ノンストレステスト)は、昨日の昼間も、
そして再度、夜遅くに行い、赤ちゃん元気を確認していた。
きっと念には念を入れて確認を・・・の指示が有賀先生から出ていたのかもしれない。

臍帯が巻き付いていたとしたら、下から出産した場合には、危険が伴うことがある。
実は親戚にも、実は臍帯が首に巻きつき、脳性麻痺になってしまった赤ちゃんがいた。
とにかく、無事に、元気に出てきて欲しい、と、祈る気持でいっぱいになる。

夫には、臍帯の件は伝えなかった。
ただでさえ、あんなに緊張している。
大丈夫だから、有賀先生に任せておけばと。
私は無事の出産を強く信じていた。

付き添ってくれた助産師の阿保さんが笑いながら私にささやいた。
「ご主人、かなり緊張してますねー。顔がこわばってきましたねー」
ほんとだなあ・・・。本人は落ち着いてるのにね。
普通の分娩の立ち会いなんて、どだい無理だったんじゃないかと思ったりした。

手術予定は15:30過ぎだったが、予定時刻にナースコールがあり、もう少し遅れるとのこと。
仕方がないので、本を読み続ける。夫は相変わらず落ち着かない。父や母は病室の外にいた。

16時少しまえ。再びナースコール。
「宮本さん、準備ができました。行きましょう」

助産師の阿保さんと一緒に、点滴をぶらさげたまま3階の手術室に歩いて向かう。
父と母、夫もついてきてくれた。「あら、歩いていくのね」と母。
助産師さん「はい。そうなんです。でも、手術後はベットで運ばれてきます」
手術室の前に付き、大きな大きな自動扉が開いた。
「では、ここで。付き添いの方はそちらのソファでお待ちください」

私は、「じゃあね。いってきます」と言い、手を振った。
父、母、夫は黙って立っていた。3人がどんな顔してたか、よく覚えていないが、
ほんの一瞬だけ、夫の不安な佇まいに、ちょと泣きそうな気持になった。
自分は泣きそうな気持ちなんかじゃないのに。
そんな不安そうな顔したら、こっちが悲しくなるじゃないか。

でもでも、とても若々しい看護師さんが”手術”という場面に似つかわしくないくらいに
すごい元気に迎えてくれてくれて
「はい、宮本暢子さん!ではこちらに行きますね」と手術室に誘導してくれたので、
さっきの泣きそうな気持ち、また一瞬のうちに、どこかに飛んでいった。

大きな手術室のドアが開き、手術台の横に立つ。
スリッパを脱いで、細長い台に乗る。
3人の看護師さん、助産師さんが、私の大きな身体を支えてくれて、横向きになる。
「力を抜いて、少し丸くなってくださいね。これから麻酔をしますよ-」

ついに手術が始まる。少し心拍が上がってきた。
ふぅー。深呼吸する。
横向きに、丸くなって、麻酔を待っている間に、何にもの人の手が同時に私の身体の上を
飛び交い、心電図、血圧計などの計器が次々と付けられていく。
両足には血栓予防の機械がはめられた。
このまま、意識があるまま、手術が進められるのだ。
麻酔科の先生や、執刀の有賀先生やもう一人の男の先生、他にもスタッフの人達が
手術台の周りを取り囲み、手際よく準備が進められる。

昨日、麻酔科の先生の説明の時に同席してくれた年配の看護師さんが
左側の頭のそばに立ち、私の手を握ってくれている。
「宮本さん。私がここにずっといますからね。大丈夫ですからね」
ああ、なんて優しい声なんだろう。と思いながら、
しばらくすると、麻酔の針が背中に入る痛みをちくっと感じた。
「下半身が痺れてきますよ」と麻酔科の女医さんの声。

いよいよだなあ。

はっきりと意識のある中で、お腹から下の身体の感覚がどんどん無くなるのを感じていた。

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