2009年正月明け。
ふっと素に返り、「いま会いたい人って誰なんだろ?」
年末のいくつかのメールの中に、彼からのものがあったのを思い出した。
臆せずに、「会いたい」という気持ちをそのまま、伝えてみた。
1月5日。仕事始めの前日。初めて2人で会う約束 at 六本木ヒルズ。
ローリングストーンズのドキュメンタリー映画「シャインアライツ」を観ることにした。
映画も楽しく、鑑賞後のおしゃべりも楽しく、尽きない話題とともに、銀座で串カツを食べた。
ちょっと奇天烈な人。ちょと結婚相手には向かないという印象だったのが、
初めてじっくり語る姿に、意外とまじめで、誠実な一面を垣間見た。
特に心に残っているのが、過去の離婚歴の話を打ち明けてくれたときのこと。
結婚は恋愛の延長ではない。相手を尊敬できることが大事、と言う。
へえ。そうなのか。
人は見かけによらないと言うが、外見とは裏腹に、しっかりした価値感を持った人とわかり、
これまでの自分の色眼鏡を恥じた。
そして、好きな音楽や映画の話、現在進行形の自然・環境をテーマにした仕事の話、
そして家族の話、、、と時間を忘れて、しゃべり続けた。
この1月5日の初デートから、一気に私の気持ちが動いた。
・・・と言いつつも、実は振り返ると、12月末までにも、お互いに、心の奥底にある気持ちには
うすうす気がついていたようだ。
いろんなことに興味を持ち、自分の考えをしっかり持っている。
その考えにお互い、共感できることがとても多かった。そして何よりも一緒にいて楽しい。
でも、この数ヶ月間は、ずっと押しとどめていたことが分かった。
私は、”結婚には向かない人”、という色眼鏡で。
彼は、”大事な仕事の相手だから”、というブレーキで。
そんな奥に秘めた、押しとどめていた気持ちが大量にあったせいか、
その後は、信じられないほどの勢いで事が進む。
1月7日:我が家で新年会。仕事仲間2人を交え、鍋を囲む。
1月9日:仕事の打ち合わせ。その後、夕食を2人でとり、楽しく談笑。
1月10日:連休なので、会おう、という誘いのメール。
・・・いろいろすったもんだの細かい成り行きは省くが、
ここから、いわゆる”おつきあい”が始まった。
そしてこの3連休中のうちに、結婚することを決め、
1週間ののちに、お互いの両親に報告。
私は父と母に長い手紙を書いた。
”父上、母上さま。大変に長らくお待たせいたしました。
私は、ようやく、心から結婚したい!と思える人に出会うことができました。
その方は・・・云々”
札幌にいる両親。直接に会って説明ができないので、
丁寧に、婚歴や年齢などのネガティブ要素も含め、彼の人となりをたっぷりと、
厚い厚い手紙を認めた。
父からは、すぐに返事のハガキが届く。いつもながらの達筆で、
”郵便受けに分厚い手紙。中を開くと重要な手紙が。
すばらしい報告をありがとう。カメラマンとは感性豊かな素敵な仕事・・・云々”
母からの電話で、父が私の分厚いハガキを見つけ、中身を読み終わったあと、
母のところに飛んできて、”ナコからの大事な手紙が来ましたよ!”と
それはそれは、大喜びだったと教えてくれた。
そして、懸念された、離婚歴のことも、父は気にしないと。
母もこれには意外だったと後から述懐。
私が選んだ人だから、最終的にはすべて受け止めてくれたのだと、本当に嬉しかった。
そして、祖母にも念願の孫の朗報が伝わり、「嬉しくて、涙が出るよ」と言ってたわよ、と母。
札幌の両親が認めてくれたことで、彼も本当に嬉しかったと言う。
そしてその後、彼も父と母あてに、心のこもった手紙を書いてくれた。
1月24日:彼の両親に挨拶にいく。
母の帯を締めた着物姿で、緊張しながら家に入る。
お父さん、お母さんには、想像以上の歓待を受けた。
うわさ通りの個性的なお母さん。優しい穏和なお父さん。
お母さんはずっと私に詰問責めだった。
「イチロウのどこが気に入ってくれたの?」その一点を・・・。
そして、帰り際には
「あなたみたいな立派なお嬢さんが、うちのどら息子と。
ほんとにありがとう。仲良くしてね。別れるならわたしが死んだあとにしてちょうだいね」と。
49歳、離婚歴2回の彼。もう結婚するなんてことは考えていなかったので、
急遽持ち上がった再婚話に、彼の両親は相当に慌てたらしい。
しかし、私の登場により、彼に新しい風が吹いたことを、心から喜んでくれた。
私も、ひと味違った面白い彼の家の雰囲気がすぐに好きになった。
1月末。両親の代わりに、神奈川に住む叔父・叔母に結婚の保証人を依頼。
弟夫婦も交えて、食事会をした。幼少期からの深いつきあいの叔父に
この結婚を認めてもらい、後ろ盾になってもらったことも大きい。
2月2日:入籍。両親に彼を紹介するまえに入籍することに彼は躊躇したが、
ここまできたら、当初の目標だった旧暦でいう2009年のうちに結婚したい!と強く主張。
日柄がとてもいい、と信頼する人に後押しされたこともあり、札幌の両親も説得して、無事入籍。
1月5日から1ヶ月立たないうちに、私はついに結婚にたどり着いた。
39年間は、なんとぐずぐずしていたことだろう。
40歳になってからの婚活。
目標設定通り、40歳と3ヶ月あまりの、このラストスパート!奇跡のスピード婚!
結婚が決まるときは、すべてのことがスムーズにいく、、、と聞く。
私の場合も、傷害がなく、気がついたら入籍までたどり着いていた。
無理なところがなく、お互いに気持ちが離れずに、とんとん拍子だった。
結婚って、そんなものなのかもしれない。
2月2日。渋谷区役所に婚姻届けを提出。宮本性になった。
宮本一郎(49歳)、暢子(40歳)
私たちは夫婦となり、好天の渋谷の街を笑顔で散歩した。
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