2011年7月24日日曜日

40歳からの子作り(その4)・・・流産後の不調との闘い、そして決意

自然に妊娠できる力はあるとわかったことは唯一の救いだったものの、
流産の後は、ぐずぐずと、体調不良が続いた。

とにかくつらかったのはひどい頭痛。
医者は、妊娠中に出るホルモンの影響なので、しばらくすると治るというが、
1ヶ月経っても治らなかった。
今までこんな頭痛に悩まされた経験がなく、もしや脳に腫瘍でも出来たのでは?と
脳外科でMRIまで撮影してもらった、が、異常なし。
ホルモンバランスが崩れているだけ、とのことだった。
仕事にならず、休むこともしばしばあり、仕事仲間にも迷惑をかけていた。

その頃、職場では新しいサービス開発準備が架橋。
リーダーの私自身が先頭にたって動き回り、パートナー企業との折衝や
クライアント開拓に当たらなければならなかった。
流産のため、2週間以上も動けなかった分を取り戻さなければ・・・との焦りもあり、
時間にも、精神的にも余裕がなかった。
職場のメンバーには、なるべく事情を包み隠さず話をし、理解を求めながら組織運営をしていた。
でも、今までのようにパワフルに仕事に対峙できない。

ただ、ここで自分が頑張らなければ。
この新しいサービスが日の目を見るまでは、と、少ない気力を振り絞って、
毎朝、ベッドから這い出る思いで、会社に向かっていた。
早く立ちなおりたいという気持が、ますます身体に無理を強いていった。

2010年夏は例年以上の猛暑だった。
連日続く外回りの営業。
あるとき、明らかに脱水症状になり、主治医に駆け込む。
咳がとまらず、アレルギー性の気管支炎も再発していた。
その後、ほぼ毎日、点滴を受けながら仕事を続けた。
ついでに、この頃から、持病の腰痛も悪化してきた。

家に帰ると、何も手につかない。
夫にだけは、「もう仕事を休みたい」と弱音を吐いていた。

そんな体調不良との闘いが続いた夏の終わり。
表参道の鍼灸治療院の徐先生から言われた一言が、私を大きく動かした。
「うーん。せっかく良い状態になっていたのに。
こんなに疲労が貯まっている身体には、赤ちゃんは来てくれませんよ」

明らかに仕事過多だった。
無理を強いてきたこの数ヶ月を、徐先生に厳しく、ぴしゃりと指摘された。
「どちらが大事なのかを考えないとね。宮本さんにはこの2年ぐらいが勝負ですよ」

言い換えれば、もう2年ぐらいしかない、ということだろう。
相変わらずの欲張り精神が治っていない。
仕事も、赤ちゃんも、と、両方の夢を追っている。

鍼灸治療が終わり、着替えをしながら、先生の厳しい指摘を反芻し、
今本当に自分にとって優先すべきことは何か?を改めて突きつけた。

仕事も、赤ちゃんも、と両方に全力投球することは、今の私の年齢・立場ではもう限界。
これまでのように、24時間、仕事脳。全力投球の生活はもうできない。
メンバーにも迷惑をかける。
赤ちゃんを授かる夢も中途半端になる。

「思い切って、仕事を辞めようか。」

そして、困ったときの駆け込み寺。
いつも的確に指南をくれる友人の美佐子さんに急遽会いにいき、
最後の背中を押してもらった。
「すぐに辞めるべき。明日にでも、会社に辞表を出すべきだよ。」ときっぱり。
私が最終決断をする道をつくってくれた。

9月末。約20年勤務をしてきた、ぴあ(会社)を辞める、決意をした。
身体はもちろん、精神的にも今までになく追い詰められていた。

10月始め、上司と面談。
流産後、体調が非常に悪く、仕事に責任をもって全力投球ができない。
今の事業責任者の立場を全うできないので、会社を辞めたい。
話をしながら、涙が出てくるのが抑えられず、我ながら
「ああ、相当にメンタルにもきてるなあ」などと感じながら、切々と陳情を続けた。

流産後も、人前で泣くことはなかった。夫の前ですら、涙を流さなかった。
泣かないことで、前向きに乗り切ろうと思ってきたが、心に貯まっていた哀しみの澱は
溜まりに溜まっていたようだ。ついに溢れ出てきてしまった。

この涙がなければ、上司はうんとは言わなかったかもしれない。
こいつが泣くなんて、これはただ事じゃないな、と、ようやく分かってくれたようだ。

11月始め、社長との面会を経て、正式に退職が認められた。
今の事業を引き継いでくれる仲間もようやく見つかった。
11月15日辞令が出て、職場の仲間にも報告する運びになる。
その時の、みんなの真剣な、そして不安の入り交じった深刻な表情は一生忘れられない。
万感の思いを込めて、説明をし終えた。もう力尽きた、抜け殻のような身体だった。

この後、自分の仕事人生の総決算。
ゆっくりと、3ヶ月ぐらいかけて、仕事の引き継ぎをすることになる。
そして、仕事を辞める決意をしたあと、身体には大きな変化が訪れた。

いつもの表参道の鍼灸にて。11月半ば。
「あら。今日は力が抜けていい身体になっていますね。また妊娠できそうな感じですよ」
この徐先生の触診の力は驚くべきだ。
こうして、少しの変化も見逃さず、迷わず明言するところが、またすごいのだ。

私も驚いた。
「え?そうですか。先生。実は、仕事を辞めることにしたんです」

先生は、満面に笑みをたたえ
「そうですか!それは良かった。よく決意しましたね。
それで、こんなに身体が柔らかくなってるんだ」

身体はなんと正直なのだ。
これまでの頭痛、腰痛、気管支炎の症状が一気にどこかに飛んだ。
なんだったの?

「身体は脳が支配しているんですよ」と先生。

体調が悪い中、一生懸命に仕事と格闘し、ますます体調が悪化し、精神的にも追い詰められ
身体を正常に司るべき自律神経、ホルモンが機能不全を起こしていたのだろう。

大きな荷を下ろすことを決め、一気に全身に血が巡りだしたみたいだ。
驚くべき急変。
身体は待っていた。私の決意を待っていたんだなと強く感じた。

そして、その後、1ヶ月後の12月末に再び妊娠が判明。
本当に思いがけず、こんなに早く、天使が再来してくれた。
赤ちゃんも私の決意を待っていたのだ。

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